Bookmark 商品開発&製造エピソード
今回ご紹介するのは、フェルトの飾りがついたシンプルなブックマーク「Bookmark」(小さなフェルトのブックマーク)です。
東京都にあるNPO法人杉並いずみの就労継続支援B型事業所(杉並いずみ第二)で製造しております。そんな「Bookmark」の開発・製造エピソードについて、職員の渡邉さん、そしてデザイナーの星子さんにお話を伺いました。
ご自身がデザインした商品について、思いついたきっかけやコンセプトなどをお聞かせください。
星子さん:まず、eqaultoとの出会いからお話ししますね。equalto award 2014に応募したところ、採用していただき、 「Teruteru」(てるてる坊主のくつべら) という商品を発売しました。以前から障がい者のモノ作りには興味があり、是非このような取り組みに参加したいと思っていました。
スタッフ:そうなんですね。興味を持ったきっかけはなんですか?
星子さん:兄が特別支援学校に勤務しており、学校生活の話をよく聞いていました。モノ作りの授業などで何か手伝えることがないかと思い、学校へ見学に行ったこともあります。
スタッフ:そのようなバックグラウンドがあったのですね。「Bookmark」の商品開発を進めるにあたり、心がけていたことはありましたか?
星子さん:「Teruteru」では、シルエットをなるべく左右対称にするなど、手づくりで高度な技術を必要とするデザインを施設の方と協力して作り上げました。一方、今回の「Bookmark」では、手づくりならではの自由度の高い、温かみのある商品を目指しました。また、「Teruteru」の経験を活かして、より「作り手のバリアフリー」を意識したデザインを心がけました。
スタッフ:施設の方と一緒にモノ作りをした経験のある星子さんだからこそ、施設の特徴を活かしたデザインができるのですね。
商品開発を進めるにあたり、どのような工夫がありましたか?
星子さん:「Teruteru」の時は、デザインが決まった後に施設にお伺いしましたが、今回は「作り手のバリアフリー」を意識したデザインをするために、モノ作りの現場である杉並いずみさんの施設を訪問した後にデザインを考え始めました。
渡邉さん:施設を見学していただいて、実際いかがでしたか?
星子さん:活気に溢れた職場だなぁと感じました。だから、「Bookmark」を利用者さん(※)が製造することによって、さらに活気に満ち溢れればと思いました。新しいモノを作るというよりは、フェルトボールという杉並いずみさんの得意分野を活かした商品を目指しました。
※事業所に通う障がいのある方々
スタッフ:そうだったのですね。「Bookmark」というアイデアはどのようにして生まれたのですか?
星子さん:お借りしたフェルトボールを家やオフィスの様々な場所に置いてみて、どんな見え方で、どんな機能があると商品として成立するのかと、手探り状態からアイデアを練っていきました。ふと、本の上にのせた際、「あ、ちょこんとのっている姿がいい。」と感じ、ブックマークにすることを思いつきました。
スタッフ:このフェルトボールが生活の中にあってかわいらしいと思うシーンが、このような機能性につながったのですね。
フェルトボールの大きさや色、紐などを決める上で、こだわったところはありますか?
星子さん:フェルトボールの大きさや色は、いろいろな人に見ていただいて意見を聞きました。自分の子どもや妻、友人など、幅広い年齢層から意見をもらいました。紐に関しては、初めは「1本にしないと」と思い、試行錯誤したのですが、作りやすさや消費者のことをよくよく考えると、「紐が2本ある方が便利じゃないか?!」と気づき、最終的にこの仕様になりました。4色そろえているのですが、本棚に並んでいる姿もカラフルでかわいいですよ。
スタッフ:なるほど。色々と繰り返して今のデザインになったのですね。渡邉さんたちは、こだわった点などありましたか?
渡邉さん:星子さんが感じられた「ちょこんとのっている感じがいい」を表現するために、直径を一回で測ることができる治具を活用して、フェルトボールの大きさに細心の注意を払いました。
スタッフ:そのような工夫をしていただき、ありがとうございました。すごくいい商品になったと思います!
最後に、「Bookmark」への思いやお客さんへのメッセージがあれば教えてください。
渡邉さん:星子さんをはじめ、多くの方に関わっていただき、無事完成することができました。多くの方の想いが詰まっているので、手に取ってくださった方に長く愛される商品、送られた方が笑顔になるような商品になればいいな、と思っています。
星子さん:まず商品を気に入ってもらえて、その上で「そのような背景があって生まれた商品なんだ」と知っていただけると、とても嬉しいです。自分用以外にも、ギフトとして本と一緒にラッピングのようにしてプレゼントしたり、新たな使い方を見つけていただけたら楽しいかなと思います。 背景や用途に関心を持ってもらいつつ、「障がいのある方の個性を活かし、みんなで協力して活躍する」、そんな新しいモノ作りの形が広まったらいいなと思います。
スタッフ:より多くの方に手に取っていただけたら嬉しいですね。
星子 卓也
1974年 熊本県生まれ
桑沢デザイン研究所を卒業後、デザイン事務所、雑貨メーカー勤務を経て独立。
現在は、グラフィックデザインを中心に活動中。
equalto award 2014 優秀賞受賞